五輪聖火リレースタート 「復興」象徴の福島から

共同通信

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期された東京五輪の聖火リレーが25日、東日本大震災から10年の福島県からスタートした。大会理念の「復興五輪」を象徴する場所として、東京電力福島第1原発事故の収束作業の拠点となったサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)を出発。7月23日の開会式で国立競技場の聖火台に点火されるまで、121日間をかけて日本列島を巡り、約1万人のランナーが聖火をつなぐ旅が始まった。
 首都圏の緊急事態宣言は21日までで解除されたが、新規感染者数は各地で増加傾向にあり、感染防止に配慮した安全な運営が最大の焦点になる。第1走者は、震災が起きた2011年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)で優勝した日本代表「なでしこジャパン」の当時のメンバーだった宮間あやさんや岩清水梓選手らがグループで務めた。岩清水選手がトーチを持って走り、福島県広野町の大和田朝斗さん(16)に聖火を引き継いだ。福島県富岡町でランナーが掲げていたトーチの炎が消えたものの、実行委員会関係者がランタンを使って再点火し、リレーは続行された。
 これに先立つ出発式は、新型コロナ対策として一般客を入れず、出席者を約60人に絞り込んで間隔を空けて座る形での簡素な式典となった。大会組織委員会の橋本聖子会長は「日本と世界の皆さんの希望が詰まった大きな光となり、国立競技場に到着することを祈念する」と述べ、福島県の内堀雅雄知事は「私たちの復興の歩みは、どんな困難も乗り越えられるという力強いメッセージとなって、聖火を希望の灯として輝かせる」とあいさつした。菅義偉首相は出席を見送った。
 著名人ランナーの辞退が続き、一部自治体からは中止や縮小を求める声も上がる。五輪開催そのものに否定的な声も根強く、組織委は盛り上げと感染防止の両立に苦慮。沿道の観客には密集回避やマスク着用、拍手での応援など注意事項の順守を呼び掛ける。過度な密集が発生した場合には当該場所の走行取りやめも検討する。