五輪延期で表彰状の質向上 岐阜・美濃手すき和紙使用

共同通信
東京五輪・パラリンピックの表彰状に使われる美濃手すき和紙をすく職人=2020年3月、岐阜県美濃市東京五輪・パラリンピックの表彰状に使われる美濃手すき和紙をすく職人=2020年3月、岐阜県美濃市

 東京五輪・パラリンピックの表彰状に使われる岐阜県美濃市特産の美濃手すき和紙。製作を担った「美濃手すき和紙協同組合」は3月までに予備を含めて約1万9千枚を仕上げた。五輪は1年の延期が決まったが、同組合の鈴木竹久理事長は「手すき和紙は時間を置くと状態が良くなる。熟成された表彰状が選手に渡る」と前向きに捉えている。
 職人ら約40人は昨年7月に表彰状作りを開始。後継者不足で人手が足りない中、美濃和紙を世界にPRしようと自らの仕事の合間を縫って製作に打ち込んだ。特長である薄くて丈夫な紙を作るために丁寧にすきあげ、五輪延期が発表される約1週間前に完成させた。
 美濃和紙は1300年の歴史があり、正倉院には大宝2(702)年の戸籍の紙が現存する。美濃和紙のうち、指定団体の職人が伝統的な製法や用具を使ってすいた紙は「本美濃紙」として国の重要無形文化財となっている。2014年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録。表彰状も本美濃紙と同じ材料やすき方を用いている。
 同組合によると、手すき和紙は一般的な洋紙と異なり、薬品を一切使わないため、空気に触れると紙の白さが増す。また時間を置くことで、紙が吸湿と乾燥を繰り返し、しっとりして肌触りがよくなるという。