包摂的な社会へのきっかけ ロンドンパラ演出家が講演

共同通信
「パラリンピックの開会式、閉会式は障害者のための舞台になる」と語るジェニー・シーレイさん=2016年10月21日、東京都港区「パラリンピックの開会式、閉会式は障害者のための舞台になる」と語るジェニー・シーレイさん=2016年10月21日、東京都港区

 2012年ロンドンパラリンピックの開会式で共同ディレクターを務めた演出家ジェニー・シーレイさんが来日し、21日の東京都内での講演で「20年の東京パラリンピックへの『旅』は、日本が平等で包摂的な社会になるきっかけになる」と語った。
 シーレイさんは7歳の時、親友に押されたことがきっかけで耳が聞こえなくなった。現在は障害のある俳優やスタッフでつくるロンドンの「グレイアイ・シアター・カンパニー」の芸術監督。音声や手話を使った先駆的な舞台が、欧州を中心に注目されてきた。
 パラリンピックの開会式で障害のある人が演出を担当したのは初めて。「障害者は世界中で隠され、社会の一員ではないと思われている。そういう偏見を変えるチャンスだった」とシーレイさん。
 シェークスピアの「テンペスト」を題材に、障害者の人権というテーマに真正面から取り組んだ。障害者がステージの中央に立ち、その中にはトラック運転手や母親、デザイナーなど、もともとはアーティストではない人もいた。トレーニングで彼らの身体的な力を引き出し、現代サーカスの要素を取り入れた壮大な表現で多様な人が共に生きる世界を現出させた。
 4年後の東京大会に向けて、シーレイさんは開、閉会式ばかりでなく、今後実施される文化プログラムの取り組みなどが障害のあるアーティストの表現を広げる機会になると指摘。「20年に終わることではなく、20年から始まるものだ」とも強調した。
 「既に東京でもさまざまな準備が始まっている。日本にもすばらしい、輝きを持ったアーティストが眠っているはずです。そういう人をぜひ探してほしい」