能狂言、ITでおもてなし 五輪にらみ外国人いざなう
共同通信 能や狂言を外国人に楽しんでもらおうと、ITを活用した「おもてなし」の取り組みが進んでいる。タブレットや眼鏡型ウエアラブル端末で、英語のせりふやあらすじを見られる仕組み。2020年の東京五輪をにらみ、博物館も展示品の解説にスマートフォンなどを活用している。
「不思議な病に苦しむ葵の上への対応を臣下が述べます。舞台もご覧ください」。東京都文京区の宝生能楽堂。独特の節回しが場内に響き、手元のタブレット画面に源氏物語の説明が流れた。
能に興味を持つ外国人や若者が増えているが、せりふや歌に使われる古語にはなじみが薄い。このため代表的な流派である観世流は、初心者でもわかるよう英語と日本語で説明するタブレット端末を貸し出す仕組みを導入した。
舞台の進行に合わせて画面が自動的に替わり、操作する手間がない。音声が出ないので、他の観客の邪魔にもならない。舞台装置や能楽師の役割などの豆知識もイラストと文章で説明する。
システム開発会社「NTTコムウェア」(東京)が開発し、対応する言語を増やす予定だ。能楽師の観世喜正さんは「日本文化を見直す風潮もあり観客は増えるだろう。まずは舞台を見てほしい」と力を込める。
ソフトウエア開発「エヴィクサー」(東京)は、狂言の上演中に眼鏡型ウエアラブル端末に字幕を表示するシステムを製作した。英語と日本語に対応し、視界の下の部分にせりふや説明が出る。東京都内で上演された演目で、外国人観客が使い好評だった。今後は利用拡大を目指す。
東京国立博物館は、館内を案内するスマホ用アプリ「トーハクなび」を提供している。館内で自分のスマホやタブレットを展示物にかざすと、英語と日本語に動画を交えて、歴史的な背景を詳しく紹介する仕組みが人気を集めている。