【学生記者コラム】星降る空へ願いを込めて はやぶさ2取材会の成果 (田矢美桜奈)  2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が運んだカプセルが地球に帰還した。2014年に打ち...

47文P編集部
高校生による「はやぶさ2」オンライン取材会をサポートする田矢美桜奈さん高校生による「はやぶさ2」オンライン取材会をサポートする田矢美桜奈さん

 2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が運んだカプセルが地球に帰還した。2014年に打ち上げが行われて以来、6年越しの快挙である。そこには当然のことながら、プロジェクト開始当初からチームを支え続けた吉川真氏の姿もあった。テレビ・新聞各メディアでその様子を目にした自分はほんの少し、心が温かくなるような、そんな印象を受けた。
 その日から遡ること1カ月前、オンライン上ではあるが私は吉川真氏と対面した。11月14日(土)に都立科学技術高等学校にて行われたオンライン取材会では、全国の自然科学部門の高校生約60名に向けて「はやぶや2」のミッションマネージャーである吉川真氏を招いたインタビュー会が行われたのだ。この取材会は「文化部のインターハイ」こと全国高等学校総合文化祭の2020年高知大会がWEB開催になったことに伴い、制限されてしまった高校生同士の交流の機会を少しでも増やそうという思いのもと、東京都高文連自然科学部門の主催で開催されたもの。幸運なことに、取材会経験者OGとして取材会の運営に関わっていた自分もその夢の舞台の一端にお邪魔することができた。普通なら会うことが出来ない方に、オンラインとはいえ直接話せるという絶好の機会、当日会場に集まった高校生たちも期待と不安からか静かにさざめいていたのを覚えている。
 これまで自分は高校生時代のご縁から、何度かこうした高校生が第一線の著名人に対してオンラインでインタビューを行う「オンライン取材会」に関わってきた。その時々で美術や音楽、茶道具などテーマはバラバラだったが、毎回憧れの人を目の前にして、感銘を受けつつ目を輝かせて質問をする高校生たちの生き生きとした姿を数多く目にしてきた。今回の「はやぶさ2」の取材会は、これまでに以上に活発かつにぎやかな場であったと感じている。それはひとえに、吉川さんの周到な準備と、理系高校生たちの好奇心が作り上げたものだと言えるだろう。
吉川さんが事前に用意してくださった小惑星に関する講義やプロジェクトに関する講義の資料はなんとスライド200ページ分にも及んでいた。また、質疑応答の時間では、吉川さんの母校である栃木県栃木高校天文部を始めとし、全国の高校生たちから積極的に質問が上がっていた。「なぜ小惑星に興味を持ったのか」「吉川さんにとってはやぶさ2とはどのような存在か」という生徒たちの素朴な質問に、分かりやすく、穏やかながら力強い話しぶりで一つ一つ丁寧に回答する吉川さんの姿は非常に印象的だった。
 インタビュー会の後には参加した高校生同士の交流会がZoom上で行われ、生徒たちは「今日はどうだった?」と口々に今回学んだ内容や感想を各自の好きな分野に引きつけて活発に議論を行っていた。会場である都立科学技術高等学校にも20人ほどの生徒が集まっていたが、生徒たちはあえて対面での話し合いでなく、あちらこちらで自前のスマートフォンからZoomを開き、全国の仲間たちとの束の間の交流を楽しんでいた。「近くにいるのに、遠くを見ている」という不思議な感覚を味わった。ソーシャルディスタンスが叫ばれる現在、こうした楽しみ方もオンラインの醍醐味なのかもしれない。
今回のオンライン取材会に参加した中田愛弓(なかた あゆ)さんら5人は、「貴重な機会になった。交流会では話が弾み、ほかの都道府県の高校生とも話し足りないほどだった」と嬉しそうに感想を話していた。やはり、高校生にとっては同世代との交流は何よりの刺激となるのだろう。
自分は高校生として高校新聞を作っていた時、取材を通して様々な人の話に真剣に耳を傾け、それらを苦心しながらも言葉としてまとめ続けた経験が大学生になった今も血肉となって生きていると感じる。オンライン取材会で憧れの人と対面し、目を輝かせる彼ら高校生を見ていると、ふと自分の数年前の記憶を思い出して懐かしくなる。(大学3年、東京都、錦城高校新聞委員会OG)