【くにぼめ日本遺産】(4) 鶴岡のサムライシルク  山形県鶴岡市は冬季、真っ白な雪に覆われる。明治維新期の戊辰戦争で賊軍とされた庄内藩の侍たちは汚名を...

共同通信

 山形県鶴岡市は冬季、真っ白な雪に覆われる。明治維新期の戊辰戦争で賊軍とされた庄内藩の侍たちは汚名をそそごうと、白い絹の生産に力を尽くした。当地は「サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」として日本遺産に認定されている。
 JR鶴岡駅前からバスで約10分。庄内藩校致道館は江戸後期、士風を刷新し、地域振興を図る学舎として創設された。生徒の自主性と議論を重んじ、実学であることを大事にする徂徠学を教育の柱にした。
 殿様用だった堂々たる表御門をくぐると、白い障子が目に鮮やかな木造の講堂が見える。生徒が聴講し、論語などを素読した場所で、優れた人材を輩出した。読み込まれた漢文資料などが大切に展示されている。
 戊辰戦争での敗北後、鶴ケ岡城は壊され、藩士たちは仕事を失った。窮状を見かねた旧藩家老が西郷隆盛の協力も得て、侍たちの救済と殖産のために大規模な開墾事業を計画。約3千人が刀をくわに持ち替えて郊外の林野を切り開き、誕生したのが松ケ岡開墾場だ。当時最先端だった絹産業の一大拠点になった。
 桑園311ヘクタール、大規模蚕室10棟のほか絹織物工場まで整備。世界に称賛される製品でこの町をもり立て、日本の近代化を支えた。苦労の末に誇りを取り戻した歴史が、松ケ岡開墾記念館で紹介されている。
 館内でひときわ目を引いたのは、純白の絹のウエディングドレス。清らかな白さは、侍たちのひたむきさを表しているよう。間近に迫る日本百名山の一つ、月山の冠雪に似て、気高く美しい。