「マンガでパラスポーツ」(上) ライブ会場のような一体感 高橋陽一さん いよいよ来年9月に迫った東京パラリンピック。パラスポーツをテーマにした漫画を手掛ける3人に、漫画家...
共同通信 いよいよ来年9月に迫った東京パラリンピック。パラスポーツをテーマにした漫画を手掛ける3人に、漫画家ならではの視点で、競技の魅力や楽しみ方を語ってもらった。
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サッカー漫画の金字塔「キャプテン翼」の作者高橋陽一さんは、ブラインドサッカーがテーマの漫画「ブラサカブラボー」を執筆した。
転がると音が鳴る仕組みのボールを使用。目が見えるGKや監督らが声で指示を出す。音を出さないのが観戦マナーだが、ゴールが決まると同時に大歓声が湧き起こる。
「健常者と視覚障害者が一緒にできる競技です。アーティストがバラードを歌っているときは静かになって、激しい曲の時は騒ぐ。ライブ会場のように、みんなで盛り上げる一体感があります」
会場が「シーン」と静まりかえる中、ボールが足に吸い付くようなドリブルをする場面を描いた。「体から離れないようにする独特の技術です。ボールが外に出ないように設置したフェンスに選手がぶつかるアイスホッケーのようなシーンもあります。選手たちの勇気はすごい」と解説する。
練習でゴールの隅に次々とシュートを決める選手の感覚を知ろうと、目をつぶって交差点に立ったという。「車が近づいて遠ざかる音をクリアに感じました。選手たちはボールが近づいたり遠ざかったりする音の変化から、空間を把握しているのかなと感じた」と振り返る。その経験や選手への取材を基に、ゴールの位置を感覚でイメージする場面が生まれた。
40年近く一線で描き続ける高橋さんにとって、ブラサカは新たな挑戦。「キャプテン翼を読んだ子どもたちがボールを蹴りたいと思ってくれたように、読者が会場に行ってみたいと思うような作品にしたい。もちろん必殺技も考えています」と意気込む。
一方、勝手の違いに戸惑うことも。「選手は試合中にアイマスクをするので目が描けない。漫画は表情、特に目の力で訴える部分が大きいので、感情を表現するのが難しい。キャラの描き分けは髪形や体形で工夫しています」と苦笑した。