地方こそ文化プログラムを 青柳正規さん   2020年東京五輪・パラリンピックを前に、文化の祭典として機運を盛り上げようという企画やイベント「...

共同通信
「各地でどんな文化の掘り起こしがなされるか、楽しみです」と話す青柳正規さん=2017年8月30日、東京都内「各地でどんな文化の掘り起こしがなされるか、楽しみです」と話す青柳正規さん=2017年8月30日、東京都内

 2020年東京五輪・パラリンピックを前に、文化の祭典として機運を盛り上げようという企画やイベント「文化プログラム」が、全国各地で実施されている。東京大名誉教授で前文化庁長官の青柳正規さんは、東京以外でこそ積極的に取り組み、地域振興を図るべきだと強調する。
 「2020年の人類の祭典に合わせ、文化プログラムを通じていかに地域の文化を掘り起こし、活性化して元気にするか。20年以降の日本を左右すると言えます」と青柳さん。東京大会組織委員会の文化・教育委員会委員長を務めながら、全国各地の講演会などでも「文化プログラムによる地方創生」の意義について訴えている。
 その主張の背景にあるのが、地方の危機と国の財政の窮状だ。「人とお金を大都市に吸い取られている地方に対し、国はかつて田園都市国家構想、ふるさと創生事業などを推し進めていましたが、一極集中の流れは止められませんでした」。国の借金は過去最高の1078兆円に達し、超高齢社会の到来で社会保障費は増え続け、今後は人口減少で歳入減が予想される。「大規模予算で地域振興をする体力が、日本にはほとんど残っていません」
 頼りにすべきはお金でなく文化だという。「地域の多彩な祭りや神楽、昔話などを掘り起こし、それらの価値を顕在化し再評価するのが、広い意味での文化プログラム。人々が『わが町』『わが村』への自信と希望と誇りを持ち、苦しい時代を乗り切るためのコミュニティー意識が醸成されます」
 東京大会に向けた文化プログラムには、組織委員会が認証する「参画プログラム」と、政府が認証する「beyond2020」などがあり、地域文化を題材にした企画申請が各地から相次いでいる。「特に注目されるのは、障害者と共に文化を楽しもうという企画が増えていること。地域の文化をさまざまな人々が支え参加し創造し、世界に発信して、地域から日本全体を元気にしましょうよ」