東アジアことば交流会開催 海外ドラマや海外旅行の人気を背景に、お隣の国の中国語、韓国語を学ぶ日本人も多い。期せずして2018...
共同通信 海外ドラマや海外旅行の人気を背景に、お隣の国の中国語、韓国語を学ぶ日本人も多い。期せずして2018年は平昌(韓国)、20年は東京、22年は北京(中国)で五輪・パラリンピックの冬・夏大会が開催される。「東アジア五輪・パラリンピック」ともいえる4年間を前に、同じ漢字文化圏の日本語と中国語と韓国語の日常語をあれこれ比べてみる会を開いた。題して「東アジアことば交流会」。3言語それぞれのお国柄ならではの個性が見えた。
参加者は、NHKテレビ講座の講師として活躍した東京工科大教授(中国語)の陳淑梅(チェン・シュメイ)さんと、東京成徳大教授(韓国語)の李允希(イ・ユニ)さん。いくつかの単語を俎上に、3言語でどう表現するのか比較した。
▽「君」にのぼせる
まずは「私」について。「中国語で一人称は『我』(ウォ)。日本語は『俺』『僕』『うち』などいろいろ使い分けができて便利」と陳さん。「私が~する」のような一人称の言い回しで、日本語なら「私」を省略できるが、「中国語は『我』を外せない」。韓国語は、かしこまったときの「저」(チョ)と、くだけた「나」(ナ)があり、どちらも省略可能なのは日本語と同じだ。
二人称は、韓国語も「당신」(タンシン)や「너」(ノ)などいくつかあるが、「あなた」「おまえ」などをそろえる日本語は多彩だ。この豊富なバリエーションゆえの面白いエピソードを李さんが教えてくれた。「日本で上司から『君ね』と呼ばれたことがあました。わたしは顔がのぼせてしまいました」。
韓国で「君」(グン)は王族に使われる言葉だからだ。中国語には「你」(ニィ)と「您」(ニン)があるが、役割が異なる。「相手を敬うときは『您』と言えば済む。とても簡潔な敬語表現です」と陳さんが説明した。複雑な敬語体系を作り上げた韓国、日本に対し、13億人の多民族国は人の敬い方も極めて簡潔だ。
▽ワンワンは形態模写?
擬声語・擬態語は、3言語の個性がはっきり表れる。日本語「ふわふわ」の韓国語はベットなどの場合は「푹신푹신」(プクシンプクシン)、綿あめなら「폭신폭신」(ポクシンポクシン)、歩く場面なら「사뿐사뿐」(サップンサップン)ときめ細やかな使い分けをする。擬声語・擬態語の数は日本語以上ともされる。「韓国語では言葉の音が美醜判断の基準になるくらい大事」と李さん。
一方、中国語では極めて少ない。例えば犬の鳴き声を日本語では「ワンワン」、韓国語では「멍멍」(モンモン)に対し、中国語の辞書では「汪汪」(ワンワン)とあるが...。「中国語では漢字の意味が重要。もし中国人同士でこの言葉を使ったら、『犬の鳴き真似をしている!』と笑われるかも」と陳さんが話した。意味がなければ、言葉の意味がないということかも。聞こえた音をそのまま音にしようとするのは原始的ともいえ、肉や魚を生のまま口にしているイメージ。聞こえた音を意味化することにこだわる中国語は、食材に必ず火を通そうとする中華料理の考え方と平行関係のような気がする。
▽3言語の漢字の縁
3言語はいずれも漢字が必要不可欠で、漢字という土台が共通しているゆえの深い縁を痛感させる例がある。誰かにあやまるとき、日本は「ご免なさい」「申し訳ありません」、中国は「対不起(トゥイブチ)」だ。韓国では漢字語の「죄송」(チェソン、罪悚)ということばなのだが、「罪をおそれる」とはなんと重々しいことか。
「普段、漢字表記を気にしていないから、韓国語を別の視点から発見できた」と話す李さんに、陳さんは「中国では使わなくなった漢字語が韓国、日本にも残っているというが興味深い」と応じた。
物事を見る視点と手法が日本語と中国語、韓国語では違っている。だから面白いし、お互いに発見がある。最後に陳さんは「韓国語をもっと学びたい」、李さんは「中国語を勉強しなければ」とそれぞれ発言。東アジアをきちんと理解するには、3言語が不可欠ということで意見がまとまった。