文化が出合い混ざり合う 「東京キャラバン」 五輪に向け野田秀樹発案  演出家、劇作家の野田秀樹さん発案の文化プロジェクト「東京キャラバン」。「さまざまな場所に神出鬼没に...

共同通信
仙台に伝わる「すずめ踊り」の動きを地元の継承者から教わり、「東京キャラバンin東北」のパフォーマンスに生かした=2016年9月3日、仙台市仙台に伝わる「すずめ踊り」の動きを地元の継承者から教わり、「東京キャラバンin東北」のパフォーマンスに生かした=2016年9月3日、仙台市

 演出家、劇作家の野田秀樹さん発案の文化プロジェクト「東京キャラバン」。「さまざまな場所に神出鬼没に現れ、伝統芸能や文化と出合うと何が生まれるのか」(野田)。そんな目的で、能楽師やパフォーマー、ミュージシャンらと構成するにぎやかな一団が昨年9月、「東京キャラバンin東北」と銘打ち、宮城、福島両県を訪問。地元の人たちと生き生きとしたパフォーマンスを作り上げた。

 ▽東北から
 「東京キャラバン」は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた文化プログラムを先導する企画として、昨年8月にブラジル・リオデジャネイロからスタートした。東京五輪・パラを文化の祭典としても盛り上げようという取り組みだ。
 日本では東北から始める、と決めていた野田さん。「東日本大震災から5年たち、人は震災を忘れ始めている。これまでは意図的に、震災に関しては活動してこなかったが、そろそろ僕みたいな者がやれることがあるのかな、という気持ちになれたのが正直なところです」

 ▽瞬間
 野田さんや能楽師の津村礼次郎さんらは昨年9月17日、福島県相馬市を訪ね、ほら貝や神楽、相撲甚句といった地元の伝統芸能の魅力を体感した。
 翌日、場所をホールに移し、野田さんらは伝統芸能継承者と話し合いながら本番に向けパフォーマンスを練り上げた。地球の反対側を目指す人々についての物語の朗読やパフォーマンスをベースに、ほら貝や太鼓の音色、神楽などを溶け込ませてゆく。
 迎えた本番。女優松たか子さんが物語の読み手となり、パフォーマーがしなやかな動きで情景を表現。津村が面を着けて神楽の獅子と絡むなど、この時この場でしか見られない舞台を繰り広げた。ある観客が「文化が混ざり、大きく開いていく瞬間を間近で見られ感動した」と語ったように、新しい出合いに対する喜びが満ちた祝祭的な空間となった。

 ▽継続
 福島に先立ち、9月3日に仙台市で行ったワークショップでは、小学校の合奏団と東京スカパラダイスオーケストラが「上を向いて歩こう」をセッション。世代を超えて心を開き合う時間を共有した。ここでも、地元伝統の踊りやアーティストが加わり、個性が混ざり合ったパフォーマンスが行われた。
 「一生知らないままでいる文化が山ほどあるが、実はちょっと出掛けると素晴らしいものに出合える」と野田さん。「2020年に向けて各地で『東京―』を行い、20年を軽々と超えて続いていけば」と希望を語った。

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2017年度は東京のほか京都、熊本に展開。各地の芸能を受け継ぐ人々やアーティスト、子供たちとの交流を通じて、新たな表現・文化を生み出していく方針。