五輪、文化の祭典に 障害問わない表現に期待  2020年の東京開催に向け、五輪・パラリンピックのもう一つの顔とされる演劇や音楽、ダンスなどの文化...

共同通信
空中芸を披露する、かんばらけんたさん(下)と吉田亜希さん=2017年2月、東京・青山(川瀬一絵氏撮影)空中芸を披露する、かんばらけんたさん(下)と吉田亜希さん=2017年2月、東京・青山(川瀬一絵氏撮影)

 2020年の東京開催に向け、五輪・パラリンピックのもう一つの顔とされる演劇や音楽、ダンスなどの文化プログラムが始まっている。大会は文化の祭典としても位置付けられているためだ。特に、障害の有無にかかわらず誰もが参加する表現や芸術作品への期待は高い。
 2月、英国の振付家でダンサーのクレア・カニンガムさんが横浜市で、自身が日常生活で必要な松葉づえを使った公演を行った。むき出しの体が繰り出す動きは、既存のダンス表現や、障害とは何かを静かに突き付けた。
 カニンガムさんは、障害のある芸術家の創作を促すロンドン五輪の文化プログラムで、作品制作の資金援助や国際進出などのサポートを受け、活躍の場を大きく広げた。「正常な体とは何かを問い掛ける一つの挑戦。観客に障害のある人が多いときは自分にもできると知ってもらえる。私にとっては両方の世界に接近することが重要」と話す。
 五輪憲章はスポーツと文化の融合をうたい、形を変えながら文化事業が実施されてきた。1912年のストックホルム大会で芸術が競技に加わり、その後展示に変化。92年のバルセロナ大会から多彩な行事を行う文化プログラムが始まり、ロンドン大会は障害者の表現にも光を当て、かつてない規模で展開された。
 大会への機運を醸成するため、文化プログラムは五輪の開催期間だけでなく、数年前から組まれている。国内でも、リオデジャネイロ大会後から、さまざまなイベントが開かれ、健常者との共同パフォーマンスなど「インクルーシブ(分け隔てのない)な表現」が生まれている。
 2月には、東京大会公認の文化プログラムとして、東京・青山で障害のあるダンサーと健常のダンサー計6人が共演した。演出に現代サーカスの要素を取り入れ、リオパラリンピックの閉会式にも登場した車いすパフォーマーのかんばらけんたさんが、エアリアルダンサーの吉田亜希さんとともにアクロバティックな空中芸を披露した。
 総合演出を担当したプロと市民が協働するプロジェクト「スロームーブメント」の栗栖良依さんは「障害のある人は、選択肢が圧倒的に少ない。パラリンピアンやプロのダンサーにならなくても、趣味で体を動かしたり、バレエを習ったりできる環境が身近な地域に整ってほしい」と訴え、20年以降の社会を見据える重要性を強調する。
 障害のあるダンサーと健常のダンサーから成る「ストップギャップ・ダンスカンパニー」(英国)のプロデューサー柴田翔平さんによると、英国では、大会後も多様な人が参加する作品に注目が集まる。主流と異なる視点が生み出す新たな表現が期待されているという。柴田さんは「芸術の世界で築かれ始めたインクルーシブな考え方を社会にも広めていけたら」と話した。