和食がWASHOKUになる日 「和食文化の体験会」(五輪・パラリンピック基本方針推進調査)

47文P編集部

 和食文化の普及に務める一般社団法人和食文化国民会議(和食会議)が2017年1月28日、東京都内で各国大使館関係者をはじめ障害者を対象に、文化プログラムのイベントを実施した。和食の肝である「だし」の講習会や、千葉の郷土食「太巻き祭りずし」の手作り体験会を通じて、和食の魅力を伝えようというもの。人類の祭典、2020年東京五輪・パラリンピックもきっかけにして、和食が世界文化になりつつある。

 ▽だし引き
 「和食文化の体験会」と題したこの催事は、政府の五輪・パラリンピック基本方針推進調査として実施された。和食会議副会長で料亭「菊乃井」主人の村田吉弘さんが「和食文化とだし」を主題に講義し、昆布と鰹節を使ってのだしの取り方(だし引き)を詳しく解説した。世界的関心が高まる「旨味」に関することとあって、参加者も興味津々の様子。村田さんは「だしは和食の基本。ここを入口に、自然を体に取り入れる和食の知恵の構造、文化としての理解を深めていただきたい」と期待を寄せる。
 「Futomaki festival sushi」と紹介された太巻き祭りずしの実作体験は、華やぎのあるワークショップに。巻き簾(す)の上にのりを敷き、その上に炊きたてのごはんや、食用酢で桃色にした酢めしを広げ、野菜などを載せて巻いていく。司会者が手順を英語で説明するのを聞き、スタッフの手助けを受けながら参加者たちはなんとか完成。輪切りにしたとたん、花模様のすしが現れると、「とてもきれい」「花畑みたい」といった歓声が上がり、拍手が湧き起こった。「自宅でも作ってみたい」「英語で説明してくれるウェブページはあるか」などの意見も寄せられ、国籍や文化の違いを超えて人々を魅了する和食の力を実感させた。

 ▽和食が一番
 日本政府観光局(JNTO)の10年の調査では、外国人観光客が訪日前に一番期待するのは「食事」で、好きな外国料理のトップは「日本料理」だった。こうしたニーズに応えるには、和食について多言語で体系的に説明する資料が不可欠。今回の体験会は、20年東京大会の際の来日外国人客に対応するためのマニュアル作りに役立てるのが主な目的だ。和食会議が参加者・関係者らへのアンケートも実施し、「和食文化の発信・伝達方法のモデル」として取りまとめる。
 和食文化の保護・継承を推進する団体として13年に設立された和食会議は、毎年11月24日を「『和食』の日」とし、年間を通じて学校給食への和食の普及促進、小学生向けの和食ワークショップなどの活動を続けてきた。さらに、和食とは何か、食べ方、食器、しつらい、食材、調理法などについて解説する「和食文化ブックレット」シリーズを監修。「外国人観光客を和食でもてなすなら、和食文化についてちゃんと説明できるくらい理解していなければだめ」という多くの人の座右の書になっている。

 20年東京大会開催までに、文化プログラムなどを通じて日本人の和食文化の理解は深まり、外国人が学ぶ環境が急ピッチで整えられるだろう。例えば和食が諸外国で定番の家庭料理の一皿になって、文化の多様性を吸収しながら、広く地球上で「私たちの料理」として愛される「WASHOKU」になる―そんな日も近いかもしれない。