中高生取材で〝化学反応〟 文化プログラムプレスセンター

47文P編集部
文化プログラムプレスセンターがスタートし、企画展を取材する中高生ら=2016年11月27日午後、東京都江東区文化プログラムプレスセンターがスタートし、企画展を取材する中高生ら=2016年11月27日午後、東京都江東区

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けた文化プログラムを中高生がボランティアジャーナリストして取材する「文化プログラムプレスセンター」の第1回が2016年11月27日、東京・有明のパナソニックセンター東京で開かれた。取材活動はイベントを活性化し、参加メンバーの記事や手作り新聞はユニークな視点を提示した。文化プログラムそのものに新たな価値を付加するなど"文化の化学反応"を起こしつつあるようだ。

 ▽注目の手本
 文化プログラムプレスセンターの第1回取材会の対象は、パナソニックセンター東京で開かれた特別企画展「文化のちから」(2016年12月4日まで)。日本の暮らしに息づく日本文化の美意識を、衣・食・住と色・紋というテーマごとにパナソニックの最新デジタル技術で紹介する趣向だ。20年東京大会の組織委員会が公認する文化プログラム「東京2020公認文化オリンピアード」として、大会本番まで全国で計20万件ともされる文化プログラムの"手本"となる注目企画だ。
 そんな象徴的な企画の取材に臨んだボランティアジャーナリストは、東京都内と福島県いわき市の中高生22人。共同通信社の元文化部長による「あなたのnewを見つけよう」という取材心得のミニレクチャーを聴いた後、展示を見学し、メモし、同展関係者に話を聞くなどの活動を繰り広げた。たまたま来場していた家族連れにあれこれ取材する姿もちらほら。

 ▽特集新聞作り
 参加メンバーが取材を基に書いた記事は個性が光った。東京都小平市の錦城高校の8人をはじめとする新聞委員会は、展示会と取材会の様子を紹介する本格的な特集新聞を制作した。「伝統つなぐ 東京2020へ『文化のちから』」との大見出しと「中高生が取材に参加」「取材会終了後も盛り上がる」などの中見出しで当日の流れを、写真を交えくわしくルポ。会場で披露された最新の展示技術や、企画担当者インタビューなどが囲み記事として配置され、読み応え十分な内容になった。
 福島からの中高生5人はそれぞれミニ新聞を手作り。四季折々の日本文化のすばらしさを再発見できた感動をつづった「春夏秋冬」新聞をはじめ、古い伝統と新しいテクノロジーの融合による表現の面白さを説いた「"技術" 新しい発見」新聞、日本人による日本文化の再評価を促す「文化のちから」新聞などが生み出された。「日本のミラー」新聞では「踊りたくなった」との意外な感想も。

 ▽伝統と最新技術
 さらに、20年東京大会をきっかけに日常生活を見つめることが世界の人々をもてなす基礎になる、と提言する高校2年生のコラム記事「お・も・て・な・しってナンだ?」、国籍は違っても同じ日本に住む若い世代には日本文化を知り、広く伝える役目があるとする在日ネパール人の中学生の記事「日本の色を体で感じる」、伝統とテクノロジーの相性の良さに注目した記事「最新技術と日本文化」、パナソニックの創業者に光を当てた記事「松下幸之助と月の行事について」など多彩にそろった。
 パナソニックによるアンケートの結果、参加者全員が展示会と取材会を「非常におもしろかった」とし、「日本の文化の深さが伝わった」「年中行事のくわしいことが知れて興味深かった」「取材のコツをきけた」などと感想を寄せた。受け身でなく、取材や表現を通じて「わたしたちの文化企画」として文化プログラムに積極的に関与し、おもしろがる姿勢が引き出された形だ。パナソニックの担当者も「中高生の素直な質問やユニークな物の見方を投げ掛けられ、気づかされたことがあった」とうなづいた。組織委員会は、第1回取材会そのものを公認文化オリンピアードに認定した。

 文化企画・イベントへの関心を高め、若いファンを増やし、教育効果もある文化プログラムプレスセンターの活動は今後、社会的課題を解決する各地のさまざまな文化の取り組みを取材対象にして実施される予定だ。五輪・パラリンピック史上前例のない文化プログラムとして、さらなる広がりと深化(進化)が期待されている。

※「文化のちから」の動画ニュース、文化プログラムプレスセンターのメンバーによる記事、新聞などはこちら
http://bunp.47news.jp/event/2016/10/000117.html