言葉のこと、みんなで考えてみよう ダンスフェス「DANCE NEW AIR 2016」

47文P編集部
(C)大洞博靖(C)大洞博靖

 傘をゴルフクラブ代わりにスイングしたり、スマートフォンを片耳にお辞儀を繰り返す人たちって、ちょっとダンスをしているようにも見える。そんな身近な生活表現を通じて、高度情報社会の言葉の病やパワーについてみんなでいっしょに考えてみようというフェスティバル「DANCE NEW AIR 2016」が10月1日から10日間、東京都港区のスパイラルホールなどで開かれる。ダンス・ニッポン・アソシエイツなど主催、アーツカウンシル東京、港区など助成。

 ◇家族ととりとめのなさ

 オープニング「ダンス三昧プログラム」として1、2日に開催される3公演共通のテーマは「ダンスと言葉」。

 「家族という名のゲーム」(作・演出=伊藤キム)は、ごく普通の家族に焦点を当てる。舞台上では出演者と言葉の交じり合いのなかで、「生々しい家族関係」はどういうものかあぶり出される。身体が言葉をからませていくと、いつの間にか綿菓子のように家族像が浮かび上がるイメージかも。不思議な舞台になるのは間違いない。

 「前と後ろと誰かとえん」(振付・音楽=KENTARO‼)は、出演者たちが「とりとめのない想い」をダンスににじませる。「とりとめ(取り留め)」、まとまりのない想いを、言葉と音楽によってつくり生み出すダンスでつかまえてみる、といった試み。KENTARO流の軽快な音楽と、ユーモアが効いた振付のダンスを体感して、きっと観客は自然と体を動かしたくなるはず。

 ◇母語って?故郷って?

 「ティクテ」(振付・演出=山田うん)は、韓国系米国人アーティストのテレサ・ハッキョン・チャ著「ディクテ」を原作にしたダンス作品。山田さん一人が舞台に立ち、「母語とは何か」「故郷とは?」と観客に問い掛ける。東日本大震災後の2012年に福島県いわき市でも披露され、被災者の反響を呼んだ話題作の再演だ。

 4、5日開催の「CORRECTION」(演出=イジー・ハヴェルカ)は、履いている靴が床に固定されている状態の7人のダンサーがクラリネット四重奏に合わせて踊る、チェコの世界的ダンスグループの初来日公演。制約があっても人は豊かな身体表現ができることが証明される。

 8日と9日の「HAKANAÏ」(構成・演出=アドリアン・モンドほか)は、「はかない」という言葉をテーマに、フランスのグループが最先端の映像技術で作られた異次元空間のようなステージで幻想的な踊りを繰り広げる。

 8~10日開催「La Mode(ラ・モード)」(芸術監督・ピアノ=向井山朋子)はファッションがテーマ。劇場全体を舞台にして、現代音楽とダンスで服飾による人と人のコミュニケーションの魅力を明らかにする。

 このほか、待機児童問題の解決の糸口を見せてくれそうな「ダンス保育園」(2日)など併催企画も盛りだくさん。フェスティバルのチーフプロデューサー、宮久保真紀さんは「いくつかの作品は東京以外へも巡回します。見た後でじわじわと感動が湧き起こり、ダンスをしてみたくなるような傑作ぞろいですので、お見逃しなく」と呼び掛けている。

【問い合わせ】

 「DANCE NEW AIR 2016」代表 080(3340)5670

  http://www.facebook.com/dancenewair